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| 去年のバレンタインデー、シンガポールの男の子から突然電話がかかってきた。彼は私のネットボーイフレンド。3年のつき合いのメール友達である。急にどうしたの?というと『Because
it's Valentain day!』嬉しかったのを覚えている。 彼と出会ったのはInternet Relay Chat。てっとりばやく言えば、パソコン通信のインターネット&海外版である。私は、Rockがテーマの会議室を見つけ、誘い込まれるようにそこに入っていった。当然、そこに集うは異国の方々。「Hello!」と打って(云って)みた。「Hello」と間髪入れず帰ってくる。恐る恐るキーボードをたたき続けそのまま会話を続けた。リターンキーを押した数だけの会話の断片が海底ケーブルをひた走り、行き交う。気がつくと、20人ぐらいでRamonesについて侃々諤々語り合っていた。こうして、私はインターネットチャットというものにはまっていった。好奇心のどきどきと英語修得への野望を胸に秘めながら。 見知らぬ国の見知らぬ人々とのコミュニケーションは言い知れぬ『刺激』に満ち充ちている。あれはチャットを初めて間もない頃、アメリカの中年女性とチャットで仲良くなってしばらく話していた。すると、彼女が自分の写真を送ってくれると云う。(そう、こういうこともできるのだ。まさに、リアルタイム・コミュニケーション!)じきに彼女から私宛にJPEG画像が送られてきた。そこに写っていたのは、にっこりとカメラに微笑む妙齢のご婦人。しかしなんと、彼女の首から下は一糸まとわぬあられもない姿なのだ!つまり凄いモノ見ちゃったわけ。びっくり仰天、畏れをなした私は、挨拶もそこそこ、会議室を後にしたものである。まあ、その後は誰かに送りつけられてきた写真には警戒するようになったけど、チャットやってるといろいろなことがあります。 ともかく、当時はチャットが楽しかった。英語さえ出来ればホント、国籍関係なくさまざまな出会いがあるのだ。でも、フィンランドの人などと話し出すと結構大変だ。トナカイとキシリトールくらいしかフィンランドに関する知識がない私は、自分たちの会話の共通基盤がかくも脆弱であることに、世界の広さを改めて実感させられるのである。そういうときはとりあえず「What's up in Finland?」と云って、相手にしゃべらせることにしている。でも、そういうとき一番いいのはやっぱりRockの話題。「どんな音楽が好き?」「どんなミュージシャンが流行ってる?」これだけ振れば、たいていの人とならお互い相手のことなどなにも知らなくて、何らこれといって他に共通点がなくっても会話は弾む。CRTモニターに並ぶアルファベットの羅列の向こうに、だんだん一人の『人間』が浮かび上がり像を結び始めるのだ、音楽を通して。Rockは世界の偉大な共通の関心事だよ、本当に。どんな音楽が好きか話すだけで、世界中の誰とでもコミュニケーションがとれるんだから。インターネットとRollingStonesに国境はないのだ。 はじめに話したシンガポール人のペンパルの男の子、彼は私が知っている唯一のシンガポーリアンである。マレー半島の先っぽあたりの小さな島に暮らす彼は大学で電気工学を学んでいる。インターネット・チャットが文化も生活も全く異なる彼と私を引き合わせたのだが、その後3年間も文通が続くことになるとは思っても見なかった。徴兵制のあるシンガポールでは、成人したての彼は今、兵隊にとられている。この前、親元を離れた宿舎で、仲間と写っている写真を送ってくれた。クリスマスカードは、「メール」じゃなくて「手紙」で送ろうと思う。 |